2017年11月18日土曜日

『会議の心理学』石川 弘義 著

会議を心理学の面から考えた本。

著者の石川弘義は社会心理学者。会議といっても、自らが経験するものとしては大学の教授会みたいなものが中心であるため、その会議観というか、会議とはいったいどういうものかという感覚はちょっと偏り気味である。本書でも「企業における会議では〜〜らしい」といった伝聞で書いており、出版社の謳い文句「実践的会議学入門」の言葉とは違い、営利組織の会議に役立つ内容ではないと思う。

一方で、これは「会議入門」ではなくて、「会議入門」であり、そういう面ではなかなか充実している。

特に、日米での会議の在り方を論じた章や、「会議の心理学」として集団で何かするときの心理についての先行研究を紹介する章は面白い。

最近、NVC(非暴力コミュニケーション)というコミュニケーション方法が注目されているが、これはアメリカにおいて、対立を厭わず自己主張を戦わせることによって結論を出していこうとするコミュニケーションのやり方が普通だからこそ出てきた方法であることがよくわかった(本書においてはNVCは扱われていない)。

また、「会議の心理学」についてはホールの「プロクセミックス」という考え方が紹介されている。これは、人間同士の距離によって社会的関係が変化していくことの理論であるが、これは会議の進め方にも応用できる。簡単に言えば、会議の座席をどう配置するかによって、ある程度会議の雰囲気を作ることができるというわけだ。まあ、そんなことは経験上明らかともいえるが。

このように本書には実際の会議に応用できる点もあるものの、それは話の中心ではなくて、むしろ「会議」」を通して見る心理学の話、と受け取った方がよいようだ。といっても、これは体系的に展開されるもの学問の話ではなくて、よもやま話みたいに親しみやすい本である。

※プロクセミックスについては、『かくれた次元』エドワード・ホール著、日高敏隆・佐藤信行 訳の記事を参照。

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