2014年9月26日金曜日

『アレクサンドロスの時代(第1巻)―文明の道 NHKスペシャル 』NHK「文明の道」プロジェクト著、 森谷 公俊著

少し前のNHKスペシャル「文明の道」の第1回「アレクサンドロスの時代」の単行本。

こういうNHKスペシャルの単行本は、番組の内容を深掘りするというより、一種の取材記に近いものがあるので、アレクサンドロス大王やその文明史的影響についての記述はさほど多くはない。ただ、番組を見るよりも若干情報量は多く、また背景情報なども分かるのは確かである。

アレクサンドロスの事績については、私は『アレクサンドロス大王東征記』も合わせて読んでいたのでさほど新味のある情報はなかったが、『東征記』には図表もなく重要な会戦(例えば「イッソスの会戦」とか)の具体的な様子もわからない。本書には図表がたくさんあるので、『東征記』の参考図書としてよいのではないかと思う。もちろん、『東征記』自体の要約にもなっているので、本書のみでも楽しめる。

本書の(というか多分番組の)主張は、「アレクサンドロスはギリシア文明の帝国を作ろうとしたのではなく、東西の文明を融合させようとした(少なくともそのきっかけをつくった)」というところにあり、それはさほど間違っているとも思わないが、2001年の同時多発テロの直後の製作ということもあり少しイデオロギー的すぎる記述も散見される。『東征記』を読む限りアレクサンドロスには戦いの明確な目的もなく(というのは本書でも指摘されているが)、東西の文明を融合といっても戦乱の一生を送ったわけで、どうも文明の仲介者として賞揚しすぎているきらいもある。

とはいえ、一般向けのアレクサンドロスの本は意外と少ないので、このように図版も豊富で関連事項まで含めて俯瞰できる体裁でまとめられた本は貴重である。ものすごく参考になるというわけではないが、手軽に参照できるアレクサンドロスの本。

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