グラフィックデザイナーの杉浦康平氏が、古今東西のさまざまな「かたち」について縦横無尽に語る本。
この本を楽しめるかどうかは、著者の「かたち」への見方に共感できるか、さらに言えば著者と「かたち」の世界観を共有できるかどうかにかかっていて、杉浦康平ファンにとっては垂涎の品だろうが、そうでない人にとっては「はあ?」という本だと思う。そして私は残念ながら後者である。
客観的に見てナルホドと思う部分もなくはないが、「かたち」の考察の大部分は著者の思い込みと推測で構成されていて、著者と世界観を共有しない者にとってはかなり違和感がある。私は、本書を図像発展の歴史の本だと思っていたので、このような自由な考察の書だということが、かなり期待はずれだった。
とはいえ、かたちというとすぐに西欧中心のイコノロジーの話になってしまいがちなのであるが、本書ではそういう安易さは微塵もなく、普通あまり取り上げられないアジアの図像をふんだんに参照して独自の解釈を加えている。その解釈に賛同するか否かはともかくとして、その価値は大きい。
また、本のつくりが非常に凝っていて、大量の図がちりばめられていたり、余白にちょっとした何かが描いてあったりと、杉浦康平ブックデザインが好きな人にとっては本としての魅力も高い。カバーを取ると非常にかっこいいので、その点は唸らされた。
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