2015年1月22日木曜日

『身近な雑草の愉快な生きかた』 稲垣 栄洋 著

雑草に関する雑学の本。

本書は、ごくごく身近に存在する雑草が、実は多様で高度な生存戦略を持っていることを紹介する本である。この生存戦略の紹介はかなり興味深く、それを知ってどうということはないがフムフムと唸るような趣がある。

そして、著者はそこから人生訓的なものを引き出すのであるが、管見の限りではそこは若干浅薄な感じがある。確かに雑草の生存戦略は企業経営や人の生き方そのものに示唆を与える部分があるし、事実本書を読んでそういう面で感銘を受けた向きも多いようであるから、これはちょっと意地悪な見方かもしれない。

しかし、著者は狭い紙幅の中でちょっと気の利いたことを言おうとして人生訓的なものに落とし込んでいるような所があり、例えば小中学校の朝礼で校長先生が述べる訓話じみたところがある。別に内容自体がそんなに悪いわけではないが、どうにも底が浅いような気がしてしまう。

私としては、雑草の生存戦略そのものをより深く学べた方が面白いと思ったし、更に言えば、広大な植物の世界の中でその戦略がどのように位置づけられるのかといったような話も触れていけばなお面白かったと思う。

とはいえ、植物の随筆といえば、牧野富太郎以来、生態の簡単な紹介とそこから引き出される人生訓というのがセットで扱われるのがある種の慣例である。そうしないと、読者をものすごく限定してしまうのだろう。そういう意味では、本書の人生訓話は本題を邪魔しない程度であり問題があるほどとはいえない。

ありきたりの人生訓話はやや蛇足だが内容は面白い植物随筆の本。