2020年5月10日日曜日

『世界古典文学全集36A 禅家語録 I』西谷啓治・柳田聖山編

初期禅のムーブメントを感じる禅籍群。

本書に収められた作品は、本書出版時点においてそれまで通読されたことのないものばかりで、初日本語訳となるものがほとんどである。

筑摩書房は世界古典文学全集の編纂と同時に「禅の語録」というシリーズを編纂していて、それの成果が取り入れられてできたのが本書である。なお「禅の語録」は1969年に刊行が開始されてから、長く途絶して完結したのが2016年。約50年かけて完成した不朽のシリーズである。

詳細に研究したい向きにはもちろん「禅の語録」を薦めるが、一般にはこの『禅家語録』で十分である。何しろ本書1冊で、「禅の語録」6冊分の禅籍を所収する(すごくお得!)。本書では詳細な解説は割愛されているが、本文、註、日本語訳が掲載されているから、本文の内容を知る分には十分なのだ。ただし、小さい活字の2段組なので目には優しくない。

それに本書を通読すると、初期の禅ムーブメントがどうわき起こり、完成していったかがよくわかる。禅籍を扱いながらこのようにエキサイティングな本は珍しい。ぜひ通読をオススメする。本ブログでは既に本書の内容それぞれについてメモを書いてきたが、以下簡単に紹介する(リンク先は読書メモブログ記事)。

『達摩二入四行論』柳田 聖山 訳

http://shomotsushuyu.blogspot.com/2020/03/36a-i.html
敦煌本の発見により明らかになった最初期の禅籍。極めて老荘思想の色が強いのが興味深い。

『六祖壇経』柳田 聖山 訳

https://shomotsushuyu.blogspot.com/2020/01/36a-i.html
六祖こと恵能の激動の生涯とスーパー理論。恵能は「一瞬で悟りの世界に行ける」という頓悟の理論を提唱したとされ、禅の思想を良くも悪くも飛躍させた。彼の前半生の記録は、物語としても面白い。

『頓悟要門』平野 宗浄 訳

https://shomotsushuyu.blogspot.com/2020/04/36a-i.html
「心こそが仏である」という馬祖の考えを精緻に理論化した大珠慧海による頓悟の理論書。

『黄檗伝心法要』入矢 義高 訳

https://shomotsushuyu.blogspot.com/2020/04/36a-i_29.html
初期禅の完成の姿。あまり知られていないが、初期禅の到達点として位置づけたい重要な本である。

『臨済録』秋月 龍珉 訳

https://shomotsushuyu.blogspot.com/2020/05/36a-i.html
本書中、最も有名であり、また手に入りやすい本。人にインスピレーションを与えずにおかない、強烈な能動性がある「語録の王」。

『趙州録』秋月 龍珉 訳

https://shomotsushuyu.blogspot.com/2019/10/36a-i.html
ヴィヴィッドで分かりやすく、臨機応変に説かれる生きた教え。にもかかわらず、中国でも日本でも本書は等閑に付されてきた。忘れられた名著。 

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