砂糖の生産と消費の動向を巡って世界史を逍遙する本。
岩波ジュニア新書ということで、その語り口は極めて平易なのであるが、内容は充実していて、砂糖という「世界商品」を巡って歴史が動いていく様子が生き生きと描かれている。
著者はイマニュエル・ウォーラーステインのいう「世界システム」、すなわち近代世界をひとつながりのものと認識する考えを援用しつつ、サトウキビの生産が不可避的に奴隷労働と植民地を生み出し、植民地のみならず本国の歴史すら動かす大きな力となったことを解き明かす。
こうしたことは、概略的には高校の世界史あたりでも習うことではあるが、著者の筆致は非常に具体的であって、一般論に陥ることなく、当時の事情から「どうして今ある世界はそうなっているのか」を説明している。
砂糖、という具体的な商材にフォーカスすることで、「世界システム」をリアリティをもって感じることができる内容である。モノが語る世界史、というのは個人的に注目していたが、本書を読んでこれからいくつかその類の本を読んでみたいと思わされた。
大げさに言えば、歴史を学ぶ醍醐味を感じることのできる本だろう。
【関連書籍】
『砂糖百科』高田 明和、橋本 仁、伊藤 汎 監修
https://shomotsushuyu.blogspot.com/2015/09/blog-post_9.html
砂糖についての科学的知識を網羅的に提供してくれる本。
砂糖についてたった一冊で深く知ることができる。
0 件のコメント:
コメントを投稿