中世イスラーム世界における、紙の伝播と利用、砂糖の生産と消費について述べた本。
まず内容以前に、「生活と技術」というかなり広い視野を持った書名ながら、実際には紙と砂糖についての本であり看板に偽りがある。
内容については、短くまとめる世界史リブレットなだけあって、かなり簡潔である。本書の中心は砂糖の生産と消費であるが、それに関してはよく纏まっていると思った。一方、オマケ的な位置づけである紙の伝播と利用については、あくまで素材としての紙にのみ注目して書かれているのは少し残念で、やはり紙である以上書かれている内容の方が重要なわけだから、消化不良な感じがした。例えばイスラームの絢爛たる写本文化についてはもう少し考察が加えられてもよいと思う。
それから、砂糖については著者はさらに研究を進め、本書を著して後『砂糖のイスラーム生活史』という、より充実した本を執筆している。中世のイスラーム世界における砂糖生産はただ嗜好品の栽培・生産というだけでなく、世界史的・文化史的に非常に重要であるため、こうしたテーマでより深い本を出してくれることはありがたい。
タイトルと内容が乖離しているが、イスラーム世界における砂糖について手軽に学べる本。
0 件のコメント:
コメントを投稿