ピアノの歴史を図像によって辿る本。
本書は、ピアノの発達史というよりも、それを様々な図像によって確認してみようという本である。ピアノそのものが残っている場合はそれを見ればよいとして、ほとんどの古いピアノ(やその前身にあたる楽器)は失われているうえ、特にその姿形も記録されていない。そこで著者は、ピアノが描かれた絵画などをたくさん探し出してきて、隅っこに描かれたそれを興味深く眺めるわけである。
ピアノの歴史というと、まずは構造の変化を見てゆくということが普通だろうが、歴史を物語る主体が絵画であるために、記述はいきおいピアノを取り巻く社会ということになってゆく。絵画の中でピアノは主役ではなく、ある意味では調度品の一つに過ぎないからだ。
音楽を取り巻く社会の変化があり、それが楽器の変化を催し、楽器の変化によって演奏も変わり、そして楽器を演奏する人も変わってゆく。ピアノ発達史としてはシンプルな記述が多いが、どういう社会変化に基づいてピアノが変わっていったのかという物語の方は面白い。
私自身の興味は、ニコラ・ヴィチェンティーノという人が発明したアーキチェンバロという楽器がどのようなもので、ピアノの歴史の中にどのように位置づけられるのかという興味を抱いて本書を取ったのだが、これについては説明する部分がなかった(ただし関連する事項はある)。
イメージによってピアノの歴史が理解できる労作。
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