焼酎蔵を巡りながら、焼酎の復権について考える本。
著者は、もともと焼酎を好んで飲む方ではなかったが、趣味の酒蔵巡りが高じて清酒の品評会の審査員などを務めるうち、焼酎の美味しさに気づいて全国各地の焼酎蔵を訪ね歩くようになった。本書は、その飲み歩きの中で考えたことをエッセイ風に述べる本である。
主な訪問地は沖縄(泡盛)、熊本の球磨地方(球磨焼酎)、種子島(芋焼酎)、南西諸島(黒糖焼酎)、八丈島(芋焼酎)。
酒造所を訪ね歩いているだけあって、製造法に関する具体的な記載がかなり多い。特に麹と蒸留に関して比較的詳しく述べているのが参考になった。ただし、蒸留については焼酎造りの核心の一つなので、図版などももう少しあった方がよかったと思う。どのような蒸留器を使って蒸留しているのかということはもっと注目されてよいことである。
また、イオン交換樹脂による不純物の除去については初めて知ったが、これの登場で焼酎から雑味が減ったということは焼酎史においてなかなか大きな出来事だと思った。
本書が書かれたのは80年代の第1次焼酎ブームのまっただ中である。
それまで焼酎は、安くてマズい酒という印象が強かった。ブランデーやウイスキーといった世界の他の蒸留酒は高級品に位置づけられているのに、同じ蒸留酒でも焼酎は不当に安酒という烙印を押されてきた。それは、実際に粗悪な焼酎が製造されてきたという事実もあるが、明治時代にできた酒造法に「焼酎とは清酒粕(清酒を醸造したときの搾り粕)を蒸留したもの」と規定され、そもそも余り物として製造されるものと規定されていたことの影響も大きいらしい。そのせいで焼酎の近代史はゆがめられ、我々は焼酎の真の姿を見失っていたのかもしれないと思わされた。
焼酎の来し方行く末を思う本。
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