2013年11月24日日曜日

『生活の世界歴史(6)中世の森の中で』木村 尚三郎、堀越 孝一、渡辺 昌美 著、堀米 庸三 編

中世ヨーロッパ、特に12世紀から14世紀のフランスを中心にして、当時の社会の有様を描いた本。

当時の世界観、食と住、都市の構造、城の生活、キリスト教による支配とそれへの反発、そして叙情詩の登場前夜がテーマである。

本書の最大の問題は、後半の渡辺昌美氏の担当部分が他に比して読みにくいことだ。論旨が不明確で表現が文飾に流れ、悪い意味で「文学的」。興味を惹く記述がないではないが、読んでいて後味の悪い文章である。

それ以外は、ややとりとめのない部分が見受けられるとはいえ、よく纏まっている。特に前半の森との関わりについては、面白く読ませてもらった。その他、中世の人は僧職以外は裸で寝ていた(その理由は書いていない)とか、風呂が盛んで公衆浴場(混浴)が賑わっていたとか、意外な記述がたくさんあり、16世紀以後のヨーロッパの風情とは随分異なる部分があることに驚いた。

そして、中世というと停滞した時代、どんよりと澱んだ社会と思いがちなのであるが、本書では中世を「身構えた社会」と捉える。これは、いつ何時でも忍傷沙汰が起こるか知れぬ社会、主従関係が簡単に破棄される社会、頻繁に暴動が起きる社会であった。要は、社会の秩序が十分に確立しておらず、暴力同士の危うい均衡が社会を支えていたのであった。

その他、私個人として気になった所は、中世の農業の著しい低生産性である。播いた種を僅かに超えるほどの収穫しか得られなかったというのは、農業の常識からすると俄には信じ難い。そういう状態で生活を営めたという秘密はどこにあるのだろうか。ドングリなどの採集による食糧確保が大きかったのかとも思うが、一方で「中世の人はパンをよく食べた」という記載もあり、どうやって小麦やライ麦を確保していたのか謎である。

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