書名の通り、「土とは何か」を平明に解説する本。
土壌学というのは農学の中でも特に難しい学問である。土は物理性、化学性、生物性の3つの観点から分析することができるが、その根幹には土がどのような成分で出来ているかというところが重要で、これを記述するためには数々の化学式が出てくる。
しかも、土壌学における化学式というのは、フラスコの中での反応とは違って、土の中でゆっくりと進む複雑な反応を記述するものなので、これをしっかりと分析しようとすればいきおい複雑にならざるを得ない。
そのため一般向けの土壌学の本はあまり多くないのであるが、この状況を憂慮した著者が満を持して世に問うた本が本書である。
その内容は、①土が何から出来ているかから説き起こし、②植物にとっての土の役割をまとめた後、②日本の畑の土と、③水田の土を解説し、④土中の生き物について述べ、⑤世界の土と日本の土を外観して、⑥環境問題と土について考察し、⑦「人間にとって土とは何か」というやや文明論めいた章で終わる。
特に面白かったのは③の稲作と土についてであって、日本の土は意外に肥沃ではなく畑作に向かないため水田稲作が安定的であったという指摘は、とても参考になった。私は日本の土はとても肥沃だと思い込んでいたのだが、それは間違いだったようだ。
その他にも、へー、と唸るような、ことがたくさん述べられており、これまで縁遠かった土壌学が少し身近に感じられるようになった。難しくて取っつきにくい土壌学の大変よい入り口を提供してくれる本。
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