2014年1月16日木曜日

『道教の伝播と古代国家』野口 鉄郎、酒井 忠夫編

日本への道教伝播に関する重要な論文をまとめた本。

本書は、「選集 道教と日本」の第1巻を飾るもので、日本への道教伝播について考察する1920年代の津田左右吉の「天皇考」、黒板勝美の「我が上代に於ける道教思想及び道教について」といった先駆的論文から始まり、1980年代の論文まで収めた、この研究分野の発展史を縦覧するような本である。

道教の日本への影響についてはとかく「これまで閑却されてきた」などという枕詞がつくことが多いが、現代提示されているような日本文化への影響については、既に1920年代に指摘されていたことを知った。第1部に収録されている、津田左右吉、黒板勝美、妻木直良、小柳司気太、那波利貞の各論考では、現代における当該テーマの基本的着眼点が大凡提示されていると言っても過言ではない。

本書は日本文化と道教ということを考える際に土台となる部分を提示するものであるが、決して基礎的な内容ではなく、例えば「功過格」「老子化胡経」といった言葉が注釈なしで出てくるために、ある程度の道教の知識を前提としている。既に日本への道教の影響がボンヤリと見えている人が、その輪郭をはっきりさせるために読む本という感じで、ある意味では退屈な部分もあるが、必ず一度は目を通すべき内容と言える。

道教と日本という大きなテーマに分け入っていく上で、先人の考察の肩に乗るための本。

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